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高齢者が肺炎で死亡率が高い理由
結論
どうしたら高齢者の肺炎の死亡率を低くするか?
1.風邪の症状が出たら肺炎検査
2.免疫力を下げない
3.免疫力を上げる
4.肺炎になる原因から遠ざかる
5.誤嚥性肺炎にならない対策をする
先生と生徒の会話方式で説明します。
目次
なぜ肺炎は咳が出るのか
生徒「なんで肺炎は咳が出るんですか?」
先生『肺に炎症が起きるから』
生徒「炎症とは?」
先生『簡単に言うと、やけどみたいなもの。肺に侵入したウイルスや細菌などを排除しようとした免疫が作用すると咳が出るんだ』
生徒「咳をして異物を口から出すんですね。体を守る反応だ」
先生『そう。生体の防御反応だよ』
高齢者が肺炎で亡くなる確率が高い理由
先生『日本では年間約9万5000人もの人が肺炎で亡くなっている』
生徒「多いんですね」
先生『死亡者の98%は65歳以上なんだ』
生徒「どうして高齢者は肺炎で亡くなる確率が高いんですか?」
先生『理由は2つある。1つは肺が衰えているから。2つめは高齢者の肺炎は見つけにくいから』
生徒「年配の方が肺が弱っているのは分かります。長年肺を使っているから劣化しているって。でも、なぜ高齢者の肺炎は見つけにくいのですか?」
先生『風邪と症状が似ているので風邪だと思ってしまう。風邪が悪化して初めて病院へ行くケースが多い。それと肺のレントゲン検査をしても分かりにくいんだ』
生徒「どうして?」
先生『お年寄りは若者と比べて肺がキレイではない。だから、炎症を見つけるのが難しいんだ。お医者さんが炎症を見つけられるかが鍵になる』
生徒「そっか。お医者さんには真剣に診てもらいたいですね」
先生『おじいちゃんやおばあちゃんが風邪を引いたら肺炎も疑ってね』
生徒「分かりました」
肺に異物が入ったときの肺の働き
生徒「肺に異物が入った場合、肺はどういう働きをするんですか?」
先生『咳をして異物を吐き出す。』
生徒「気管に唾が入って咳き込む経験はあります」
先生『年を取ると、喉の筋肉が弱くなるから咳き込むことが多くなる。40代からノドの衰えは始まるから気を付けてね』
生徒「分かりました。他に肺にはどういう働きがありますか?」
先生『肺は無菌状態にしようとする働きがある。気管支に繊毛(せんもう)という毛のようなものを作り、異物が肺の中に入らないようにしているんだ。この繊毛が細かく動くことで、
余分なものを肺から口や鼻へ吐き出しているよ』
生徒「そんな機能があるんですね。鼻毛みたいなものだ」
先生『そうそう。ただ加齢によって、咳き込む力、繊毛の働きは衰えているから注意してね。さらに肺の自浄機能が落ちて、肺炎にかかりやすくなる』
生徒「年を取ると体の機能は衰えていくんですね」
先生『うん。だから一度肺炎を治療しても、再発してしまうリスクが高い』
睡眠薬と肺炎の関係
生徒「他に高齢者が肺炎になりやすい原因はありますか?」
先生『睡眠薬』
生徒「睡眠薬? 睡眠薬と肺炎がどういう関係があるんですか?」
先生『人間は睡眠中も無意識に唾を飲み込んでいる』
生徒「それは知りませんでした。寝ている間も喉を使っているんですね」
先生『睡眠薬の中に筋肉を脱力させる作用があって、服用を続けると、ノドの嚥下を司る筋肉も弱まるんだ。だから寝ている間に、いつの間にか唾液が肺に誤嚥されて、肺炎を引き起こすケースがとても多い』
生徒「寝ている間にツバが肺の中に入ることがあるんですね。怖い。知っておいてよかったです」
肺炎が重症化すると心臓に負担がかかる
生徒「呼吸って、どういう仕組みですか? 簡単に教えてください」
先生『ガス交換』
生徒「何のガスを交換するんですか?」
先生『酸素と二酸化炭素だよ』
生徒「肺は酸素を吸収して、二酸化炭素を排出するってことですか?」
先生『そう。肺炎が重症化するとガス交換を担う組織が破壊しまう。ちなみに肺胞が集まったものが肺と呼ばれる』
生徒「ガス交換が難しくなり、呼吸が苦しくなるんですね」
先生『うん。呼吸困難に陥ると、次に負担が重くのしかかるのが心臓。血中の酸素濃度を上げるため、心臓は自らに鞭を打って、心拍数を上げようとするんだ』
生徒「血液に酸素が足りなくなるのは困るので、心臓が酸素を取り込むために激しく動き出すんですね」
先生『若ければ、それで命が繋がるけど、心肺機能の衰えている高齢者の場合、その努力の甲斐なく終わることが多い』
生徒「今の医療で何とかならないのですか?」
先生『肺炎によって肺が荒れると、人工呼吸器を使って呼吸の補助を強力に行っても、もはや酸素を取り込めず、呼吸はさらに苦しくなる。血圧も下がり、最終的には呼吸不全・循環不全になり、亡くなってしまう』
生徒「肺を新しく取り付けられたらいいのに・・・」
先生『普段から心肺機能を高めておきましょう』
コロナで重症化しやすい条件と間質性肺炎について
生徒「コロナで重症化しやすい条件は何ですか?」
先生『実はまだ予測できていないんだ』
生徒「確かに若者でも重症化している人もいますね」
先生『言われているのが、高齢者、喫煙歴、糖尿病、肥満や高血圧。過去の肺の病気もあるだろうし、生まれつき肺が弱いというのもあると思う』
生徒「人それぞれですかぁ。じゃあ、コロナによる肺炎と、細菌が原因の一般的な肺炎は何が違うんですか?」
生徒「肺炎は、炎症の起きる場所によって、肺胞性肺炎と間質性肺炎の2つに分けられる。細菌が原因の肺炎は【肺胞性肺炎】が多く、新型コロナによる肺炎は【間質性肺炎】が多いと報告されているよ。
生徒「肺炎にも種類があるんですね」
先生『肺胞性肺炎は肺胞の炎症のこと。肺の一部に炎症が起きるが、コロナで重症化すると両肺が炎症を起こしてしまう」
生徒「原因はなんですか?」
先生『微生物やウイルス』
生徒「間質性肺炎は?」
先生『間質性肺炎は、肺胞の壁に炎症や損傷が起こり、壁が厚く硬くなり、酸素を取り込みにくくなる肺炎もこと。ちなみに壁が厚く硬くなることを線維化と言う』
生徒「肺は厄介ですね」
先生『肺炎になったとき、どのくらいガス交換ができる肺かで生死が決まる』
生徒「ガス交換ができる肺胞を数値化できればいいのに」
先生『ちなみに間質性肺炎になる原因は30以上もの誘発要因があると言われている」
生徒「そんなにあるの?」
先生『ウイルス感染や家のホコリやカビ、ペットの毛、羽毛など色々ね』
生徒「空気清浄機買おうかな」
先生『運動不足も原因になるし、お酒の飲みすぎも原因になるし、糖尿病もね』
生徒「間質性肺炎になる予兆はないんですか?」
先生『痰の絡まない、乾いた音の咳を頻繁にくり返す』
生徒「タンが絡まない咳か。コンコン、コンコンといったカラ咳のような症状ですか?」
先生『そう、空咳。乾性咳嗽という』
生徒「かんせいがいそう」
先生『うん。身内に乾性咳嗽がいたら教えてあげてね」
生徒「はい」
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
生徒「ニュースで聞いたことがあるんですけど、COPDってどんな病気なんですか?」
先生『COPDは日本語で言うと、慢性閉塞性肺疾患っていうんだ』
生徒「まんせいへいそくせいはいしっかん?」
先生『そう。肺が実年齢以上に老化したために引き起こされる病気なんだ』
生徒「原因はなんですか?』
先生『長年の習慣や環境の蓄積が原因』
生徒「具体的には?」
先生『愛煙家や大気汚染によって汚れた空気を吸い続けること』
生徒「タバコはやめられるとしても、大気汚染は意外と気づかないかも」
先生『目に見える大気汚染もあるけど、目には見えない大気汚染もあるからね。PM2.5や黄砂などには注意だよ』
生徒「住んでいる地域や仕事内容も影響ありますね」
先生『昔は炭鉱夫やアスベスト(石綿)の問題もあった』
生徒「COPDの患者さんはどれくらいいるんですか?」
先生『国内におよそ500万人の患者がいるとされている』
生徒「そんなにいるんだ」
先生『患者の平均年齢は60歳前後で、実際に受診している人は26万人』
生徒「受診している人、少ないですね」
先生『わずか5%程度』
生徒「COPDの症状は?」
先生『それが初期段階では自覚症状が乏しい』
生徒「それは困りましたね」
先生『本人が気づきにくいだけでなく、病状がかなり進行しないと、胸部X線などの検査に影が現れない』
生徒「え!気づいたときには、重症になっているってことですか」
先生『COPDも生活習慣病と同様、サイレントキラーなんだ』
生徒「高血圧や糖尿病と並ぶ肺の生活習慣病と言われている」
先生『COPDが進行すると、ご飯を食べているときですら苦しくなるんだ』
生徒「どうしてですか?」
先生『人は食べ物を飲み込むとき、肺に誤嚥しないよう、一瞬息を止める。そのわずかな間だけでも苦しくなるから』
生徒「食事をするのも大変なんですね」
先生『一番大変なのは入浴』
生徒「なんでですか?」
先生『体温が上がると、運動しているような状態になるから、酸素の消費が速いんだ』
生徒「酸素が関係あるんですね」
先生『放っておくとすぐに呼吸不全が起きるような酸素濃度になるんだ』
生徒「酸素濃度を測る機械が品薄状態になったことがありましたね」
先生『あったね。酸素濃度は気軽に測定できるようになったからね』
生徒「COPDって治るんですか?」
先生『残念ながら今の医療では治らない。一度発症すると完治しない』
生徒「症状をコントロールしながら、うまく付き合っていくしかないんですね」
肺炎になりやすい人
先生『インフルエンザで免疫が落ちると、本来なら感染しないような弱い細菌にも、感染しやすくなる』
生徒「他に免疫力が下がる原因はありますか?」
先生『慢性的に運動不足の人は筋力が落ち、免疫力も弱まっているよ』
生徒「やっぱり運動って大事なんだ」
先生『大酒飲みは、常に肺炎のリスクがある』
生徒「お酒と肺が関係あるとは思えないんですが…」
先生『日常的な、過度の飲酒によって、肺の内部が空洞化してしまうケースがある』
生徒「お酒の飲みすぎは肺にも良くないんですね」
先生『うん。お酒によって肺の組織が次第に壊死して、死に至る肺炎を誘発してしまう危険もあるんだ』
生徒「他には?」
先生『胎児のときに発育が不十分だったり、幼少期に風邪や喘息をくり返すと、中高年になってから肺の機能が急速に低下する。コロナで重症化するリスクも高まる』
生徒「肺炎の症状で気づきにくいものはありますか?」
先生『重度の肺炎を起こすと、全身に酸素が回らなくなり、頭がぼーっとした状態になる』
生徒「見極めるのむずかしいですね」
糖尿病と肺炎の関係
生徒「糖尿病と肺炎の関係を教えてください」
先生『糖尿病は血糖値が高くなる病気。血糖値が高くなると、白血球や免疫に関わる細胞の機能が低下してしまうんだ』
生徒「それで肺炎になりやすくなるんですね」
先生『そう。白血球や免疫に関わる細胞の機能が低下すると、病原菌と戦えない状態に陥り、抵抗力が下がってしまう。そうなると、急性気管支炎やマイコプラズマ肺炎と呼ばれる肺の病に感染するリスクが高まってしまうんだ』
生徒「糖尿病にならないようにします。肺炎にも色々種類があるんですね」
大葉性肺炎とは?
生徒「大葉性肺炎ってどんな病気ですか?」
先生『肺には左右それぞれに肺葉と呼ばれるブロックがあり、肺の中が仕切られている。』
生徒「人間の肺は2つあるんですね」
先生『そう。大葉性肺炎とはそのブロックのひとつが炎症を起こす病気』
生徒「珍しい病気なんですか?」
先生『いや。肺炎のなかでも一般的なもの』
生徒「そうなんだ」
高齢者が誤嚥性肺炎になりやすい理由
生徒「どうして高齢者は誤嚥性肺炎になりやすいんですか?」
先生『一言で言うと抵抗力が弱いから』
生徒「抵抗力が高いと誤嚥性肺炎にならないのですか?」
先生『うん。抵抗力が高いと体内に異物が入ってきても、それに打ち勝つことができる。年齢を重ねるほどに抵抗力が弱まり、すぐに菌に侵されて肺炎にかかってしまうんだ』
生徒「若者は抵抗力が高いから誤嚥性肺炎になったとしても治りやすいわけか」
先生『まだ高齢者が誤嚥性肺炎になりやすい原因はあるよ。加齢によって、食べ物や飲み物を飲み込む筋力も日に日に低下している』
生徒「飲み込む筋力、吐き出す筋力がないと異物が気管に入りやすくなるんですね」
先生『そういうこと』
まとめ
1.風邪の症状が出たら肺炎検査
風邪かなと思ったら、肺炎の可能性もあると思うこと。
肺炎かもと思ったら、今すぐ検査を受ける。
2.免疫力を下げない
運動をする。
お酒を飲みすぎない。
糖尿病にならないようにする。
3.免疫力を上げる
免疫力が上がる食べ物を食べる。
筋力をアップさせる。
体力をアップさせる。
4.肺炎になる原因から遠ざかる
<感染対策をする>
ウイルスに感染しないようにする。
細菌に感染しないようにする。
人や動物に近寄らない。
海外旅行も気をつける。
汚れたものに触れない匂わない。
家のほこりやカビ、ペットの毛、羽毛などを吸わない。
30以上もの誘発要因があることを知る。
5.誤嚥性肺炎にならない対策をする
免疫力を下げない。
免疫力を上げる。
喉を鍛える。
食べるときに気管に入らないようにする。
唾液、食べ物、胃液、雑菌が肺に入らないようにする。
睡眠薬はのどの嚥下を司る筋肉も弱める。